花筏に沈む恋とぬいぐるみ
雅はキラキラした表情を見せながら、「あのブラントともコラボしたんだよ」「あのドレスは苦戦してたなー」などと昔話が止まらなかった。
そんな彼を微笑ましく見つめているうちに、フッとあの写真の事を思い出した。雅から借りたファイルに挟まっていた1枚の写真だ。
凛と同世代の男と、きっと店主だろう老人。
あれは、もしかして、と思った。
「ねぇ、雅さん。この間貸してもらったファイルに写真が挟まっていたの。……昔の写真みたいで、この店の前でおじいさんと凛ともう1人の男の人がいたの……」
「あぁ、懐かしいな。覚えているよ、高校の時に撮ったやつだ。あそこにあったのか………」
「じゃあ、もしかしてあそこに写っていたのが………」
「うん、俺だね。学生の頃に俺だよ」
花はあの写真を頭の中に思い出す。
そして、違和感の正体にやっと気づいた。
凛と元店主である祖父があまり似ていなかったのだ。その代わり、もう一人の男性が祖父と似ていたのだ。それもそのはずだ、凛の体の入っていたのは雅なのだから。
「あの写真、返すね。大切なものだよね」
「そうだね。……じゃあ店か工房に飾っておこうかな」
「うん……それがいいかも………」
少しずつ眠気を感じ始める。頭に彼の冷たい手が触れる。温かくなった体は、それがとても気持ちいい。
「ねぇ、花ちゃん……」
「うん………?」
「凛は頑固なところがあるし、強がりだし、口調は強いけど、本当は優しいんだ」
「うん………知ってる……」
「そして、寂しがり屋なんだ。だから、俺がいなくなった後……凛をよろしく頼むよ」
「………ん……そんなこ、と………」