お兄ちゃん♪サブスクリプション ~さよなら雨と小さな蕾~
【 第9話: オレンジ色の空 】
東京都庁の展望台に差し込む日の光が、徐々にオレンジ色へと変わってきた。私たちふたりの影も、床に少しずつふたつ長く伸びてゆく。
今日、私はこの後、合コンでお兄ちゃんの彼女になる。
大学生の合コンがどんなところなのか分からない。不安もある。
でも、今日はお兄ちゃんの彼女を演じるんだ。
それは私が望んでいることでもあるから……。
「俺たちの実家は、あっちの方かな?」
お兄ちゃんが夕日を眩しそうに、目を細めながら指を差してそう言う。
お兄ちゃんの横顔が夕日に当たり、オレンジ色に染まっていた。
指差した方の山を見ながら、お兄ちゃんはこんな話をしてくれた。
「小さい頃、空の向こう側って、どうなってるんだろうと思って、どこまでも若菜と一緒に手を繋いで歩いて行ったことあったな……」
「そんなことがあったんだ……」
「結局、何も見つけられなくて、夜になって警察の人に助けてもらってさ……」
お兄ちゃんは、そう言いながらクスッと笑った。
「お兄ちゃん、夢は叶うと思う?」
「信じれば、叶うんじゃないかな。諦めずに信じ続けた者だけが、夢を叶えるんだと思う」
お兄ちゃんのその言葉に、瞳から自然と涙が零れて、頬を伝ってゆく。
お兄ちゃんに分からないように、その涙を素早く親指で拭い取ると、実家の方を指差し、こう言った。
「お兄ちゃん、またあの空の向こう側へ、一緒に行こう」
すると、お兄ちゃんは私の肩を抱いて答えた。
「ああ、また一緒に行こう」