極上パイロットの赤ちゃんを溺愛初夜で宿しました
オフィスや空港内で顔を合わせることはあるが、すれ違いざまに挨拶を交わす程度。超がつくほどエリートパイロットの彼は、同じ航空会社にいても次元の違うところにいる。
背中にバラでも背負っているのでは?と思うくらい華麗なオーラや肩書から近寄りがたさを感じ、美羽のように平凡な存在がなかなか話しかけられる相手ではない。
キャーキャー騒ぐ同期の女子たちと遠くから眺めるのが関の山だった。
「よくここにいるよね」
「ご、ご存じだったんですか!?」
肩はビクンと跳ね、調子はずれの声まで出た。
まさか見られていたとは思いもせず、彼の視界に入ったときに変な顔や仕草はしていなかったかと心配になる。観察している対象物から逆に観察されているなんて誰が思うだろうか。
その反面、同じ会社のグランドスタッフというひとくくりではなく、美羽個人を識別してくれていたのがうれしい。それもオーシャンエアラインを代表するパイロットにだからなおさらだ。
目の大きなところ以外は取り立てて美人というわけでもない美羽は、存在自体も特別目立つほうではない。仕事は毎日まじめに取り組んでいるが、その他大勢のひとりといっていいだろう。
そんな美羽が顔を覚えられているとは思いもせず、密かに心が弾む。