極上パイロットの赤ちゃんを溺愛初夜で宿しました

「藤倉さんが連日休憩室にいるなんて珍しい」


隅のテーブルでひとりお弁当を広げている美羽に声を掛けてきたのは、チーフの百合香だった。「ここ、座っていい?」と美羽の向かいの席を指差す。


「もちろんどうぞ」
「展望デッキはもういいの?」


美羽が展望デッキでランチをとっているのは、グランドスタッフの間では有名な話である。
雨や雪さえ降っていなければ必ずといっていいほどそこにいるため、ここ最近休憩室にいるのが不思議に思えるのだろう。


「暖かくなるまで控えようかなって」
「そうよね。この時期は極寒だから食べてるどころじゃないでしょうし」


本音を言えば寒かろうがそこで食べたいのはやまやまだが、体のことを考えると躊躇われる。


「って、藤倉さん、お昼はサラダだけ?」
「あ、はい……」


美羽のお弁当箱を百合香が二度見する。生野菜だけを詰め込んだサラダは、ドレッシングもあまりかけていない。
< 152 / 283 >

この作品をシェア

pagetop