極上パイロットの赤ちゃんを溺愛初夜で宿しました
「今、話してるでしょう?」
彼女のほうは適当にあしらっているが、桐谷もなかなかしつこい。
(美羽を誘うとはいい度胸だ)
小さな苛立ちを覚えて足を踏み出す。
「今じゃなくて、俺は食事しながら話した――」
「仕事中にナンパか? そういうことは一人前の仕事ができるようになってからにしろ」
あまりにも見ていられず、ふたりの間に割り込んだ。
「ほ、本郷さんっ」
桐谷が驚いて一歩飛びのく。まるで鬼軍曹にでも会ったようなビビり具合だ。
そんなに恐ろしい形相をしている自覚はない。
「ほらほら、さっさと仕事に戻れ。お客様がお待ちだぞ」
「は、はいっ、すみません!」
背筋をピンと伸ばしたかと思えば、逃げるようにして駆け出す。すぐにその背中は通路の角を曲がって見えなくなった。