極上パイロットの赤ちゃんを溺愛初夜で宿しました

「今、話してるでしょう?」


彼女のほうは適当にあしらっているが、桐谷もなかなかしつこい。

(美羽を誘うとはいい度胸だ)

小さな苛立ちを覚えて足を踏み出す。


「今じゃなくて、俺は食事しながら話した――」
「仕事中にナンパか? そういうことは一人前の仕事ができるようになってからにしろ」


あまりにも見ていられず、ふたりの間に割り込んだ。


「ほ、本郷さんっ」


桐谷が驚いて一歩飛びのく。まるで鬼軍曹にでも会ったようなビビり具合だ。
そんなに恐ろしい形相をしている自覚はない。


「ほらほら、さっさと仕事に戻れ。お客様がお待ちだぞ」
「は、はいっ、すみません!」


背筋をピンと伸ばしたかと思えば、逃げるようにして駆け出す。すぐにその背中は通路の角を曲がって見えなくなった。
< 180 / 283 >

この作品をシェア

pagetop