極上パイロットの赤ちゃんを溺愛初夜で宿しました
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仕事を終えた美羽は、今夜の夕食の不安を抱えながらロッカールームを出た。
午後一時過ぎの便で香港から戻った翔は、もうすでに帰宅しているだろう。夕食をどう誤魔化そうか悩んでいた。
(萌子と食べてきたって遠慮する? それともランチが遅かったからまだお腹が空かないって言う?)
考えられる言い訳を頭の中で並べながら、電車乗り場へ向かってゆっくり歩いているときだった。
「藤倉さん」
よく知る声を不意に掛けられ、一瞬頭が混乱した。
(えっ、どうして……!?)
翔だったのだ。少し離れた場所で壁に体をもたせかけていた彼が、美羽のほうに向かって歩いてきた。
「翔さん、こんなところで――」
「ここでそんなふうに呼んで平気?」
自分の唇に人差し指を立て、〝しー〟といった仕草をしながら翔に指摘された。ハッとして口を押さえる。