極上パイロットの赤ちゃんを溺愛初夜で宿しました

冷静な彼のほうは美羽をしっかり名字で呼んでいたというのに、驚いた弾みで普段通りに呼んでしまった。急いで周りを見渡したら、ひとまず見知った顔がいなくてホッとする。


「ま、俺は平気なんだけど」
「だ、だめです。だけど、どうしてここに? とっくに家だと思っていました」
「美羽を待ってた。一緒に帰ろう」


翔は自分の車で帰ろうというのだろう。でもそういうわけにはいかない。
この前も駐車場から歩いていた姿を桐谷に目撃されてヒヤヒヤしたのだから。


「それもだめです。一緒にいるところを誰かに見られたら大変ですから」
「なら車まで離れて歩けばいい。ほら、行こう」


翔は美羽の返事も待たずに駐車場の方向に歩き出した。


「あっ、ちょっ……」


ここで大きな声で呼び止めて注目を集めるわけにはいかない。仕方なしに美羽もその後を追った。
本音を言えば、この時間に電車に乗らずに済むのはとても助かる。座るのはおろか、つり革も掴めないほど混雑しているだろうから。
< 188 / 283 >

この作品をシェア

pagetop