極上パイロットの赤ちゃんを溺愛初夜で宿しました
迷い揺れる心
仕事以外で空港を訪れるのはどれくらいぶりだろう。
さんざん行き先に迷った末に決まったのは沖縄だった。寒い本州を抜け出し、海開きも近い南国へ。体調面に不安を抱えているため美羽は泳げず、せいぜい水に足を付ける程度だろう。
小さなキャリーバッグを揃って引きながら、いつも忙しなく働いている空港内を翔とふたりで歩く。
つわりがはじまってから常にあった気持ち悪さは、不思議なことに影をひそめている。最後の思い出になる旅行だと気を張っているからかもしれない。
「この格好、逆に目立つんじゃないか?」
帽子を目深に被り、サングラス姿の翔が周りをチラチラと気にする。
「だけどそのくらいしないと空港内を翔さんと一緒には歩けませんから」
そう言う美羽も帽子に伊達メガネというお揃いコーデだ。
べつの航空会社を使うにしても、いつどこで誰の目に触れるかわからない。そんな危機的状況を回避するには、ふたりで変装する以外になかった。