極上パイロットの赤ちゃんを溺愛初夜で宿しました

「承知いたしました。ではこちらへ」
「案内なら不要。あなたは機長の命を、私は乗客の命を守ります」


翔の明瞭な言葉が、ガイドしようとした彼女を引き留める。翔は「ちょっと行ってくるから」と美羽の手を軽く握ってから席を立った。

引きしまった彼の表情から伝わる緊張感。ひとり残され、美羽はたちまち不安に包まれる。機長が搭乗中に体調不良なんて只事ではない。

(でも、翔さんが交代すれば大丈夫よね)

そう言い聞かせ気持ちを落ち着かせようとするが、鼓動のスピードが速まり手には変な汗をかく。お腹に手をあて深呼吸を繰り返すものの情緒が不安定気味なせいか、なかなかうまくいかない。

そうしているうちに次第に気分が悪くなっていく。しかしこんな状況下で乗務員に声を掛けるわけにはいかない。しばらくするとシートベルを締めるサインがつき、美羽はそれに従った。

窓の外を覗くと、前方に見えた大きな雲が白い光を放っているのが見える。

(あれなに? もしかして雷? あの中に突っ込むのかな。平気なの……?)

さらに不安が色濃くなっていく。翔が隣にいない心細さの中、美羽は胃の不快感を覚えながらシートで大人しくしている以外になかった。
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