極上パイロットの赤ちゃんを溺愛初夜で宿しました
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那覇空港まで残り二十分弱。コックピットで必死に操縦桿を握っていたのは、キャリア一年目の副操縦士だった。
機長が体調を崩して操縦を離脱したとなれば、彼の動揺が機体に伝わるのも無理はない。先ほどの大きな揺れは、操縦を代わったときに起こったものだったのだろう。
翔がオーシャンエアラインの機長だと知り、彼の表情に安堵の色が滲む。
「前下方に積乱雲が発生しているんです」
城田と名乗った彼の言うように、翔たちの眼下に大きな雲が横に列をなしていた。
積乱雲といえば夏の風物詩のように考えがちだが、大気が不安定で上昇気流が起こっている条件を満たせば季節に関係なく発生するものである。
積乱雲はパイロットにとって怖いもののひとつ。勢力が強いときには垂直尾翼が折れるといった事故が起きたこともある。
城田はこの難敵を前にして、どうしたらいいのかと途方に暮れていたという。羽田に引き返すか、ほかの空港へ降り立つか、迷いに迷っていたのだと。