極上パイロットの赤ちゃんを溺愛初夜で宿しました
電車を降り、オフィスフロアへ向かう途中、人事の兼平の姿を見つけ、その隣に並ぶ。
「兼平マネジャー、おはようございます」
「あれっ、藤倉さんか。おはよう」
珍しいものでも見るように目を見開く。
そういえば、こんなふうにして声を掛けるのははじめてかもしれない。いつもすれ違いざまに挨拶を交わしておしまいだ。
「百合香さんはご一緒じゃないんですか?」
「今日は午後だけの勤務だからね」
言われて今日のシフトを思い出した。たしか午前中は保育園の用事があるのだとか。
「藤倉さんは、このまま本郷と別れるつもりなの?」
「えっ」
唐突に振られて言葉に詰まる。兼平には離婚前提の契約結婚だと報告していたため、持ち出されてもおかしな話ではないが。