極上パイロットの赤ちゃんを溺愛初夜で宿しました

上空で待機していたほかの旅客機や離陸を待っていた旅客機の誘導が終わり、管制塔は平穏を取り戻した。
緊迫が解けたオフィス内は飛行機から乗客を無事に降ろしたあとも騒然としたまま。マスコミからの問い合わせへの対応や事後処理で大わらわだ。

美羽も本来の業務に戻りパソコンに向かっていたが、背後のほうが輪をかけて騒がしくなる。振り返るとそこに、帰還した翔以下クルーたちの姿があった。

思わず椅子をガタンと鳴らして立ち上がったが、駆け寄りたい気持ちを必死に抑え、その場に留まる。


「皆様、大変お騒がせいたしました。乗員乗客、誰ひとり欠けることなく、怪我人も出ず、なんとか無事に帰還することができました。ありがとうございます」


翔の言葉にフロアじゅうから拍手が巻き起こった。
彼の姿を見てはじめて、本当に無事に帰ってこられたのだと実感して鼻の奥がツンとする。


「おかえり!」
「よくやった!」


そんな声が方々から上がり、オフィス内が歓喜に揺れる。
少し疲れた様子の翔だが、その顔はさらに精悍さが増して凛々しく、遠くから見ているだけで美羽をドキドキさせた。

その彼とふと目が合い、鼓動がトクンと跳ねる。〝おかえりなさい〟と口パクで告げたら、翔は微かに笑みを浮かべて頷いた。
< 254 / 283 >

この作品をシェア

pagetop