極上パイロットの赤ちゃんを溺愛初夜で宿しました

もしかしたら墜落するかもしれないという恐怖だろうか、乗客たちが徐々に言葉を失くしていく。撮影者も撮っている場合ではなくなったのか、映像が乱れたあと画面が暗くなる。マイクは飛行音だけを拾いはじめた。

ピンと糸を張ったような緊張感に美羽まで鼓動が速まる。息を詰めてその音声に耳を集中させていると、再び翔のアナウンスが入った。


『調査の結果、右側のエンジンが損傷していることが判明しました。これより当機は左側のエンジンのみで飛行いたします』


機内の乗客たちの間から悲鳴にも似た声が漏れ聞こえた。
しかし翔は冷静な声で語りかけるように続ける。


『……私どもパイロットは非常事態にも対処できるよう常日頃から訓練しております。乗客の皆様も乗員も、誰ひとり欠けることなく無事に地上へお連れすることをお約束いたします』


飛行音が轟く機内は静まり返り、乗客全員が口をつぐむ。翔の冷静な語り口調に聞き入っているようだ。


『私事ですが、日本に愛する人がいます』


(……もしかして私のこと?)
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