極上パイロットの赤ちゃんを溺愛初夜で宿しました
崩れた均衡
カウントダウンパーティーの翌朝、美羽はホテルの乱れたベッドの上で目を覚ました。カーテンの隙間から差し込む明るい光が、ふたりの痴態をまざまざと映し出す。
(……ど、どうしよう! 私、とんでもないことしちゃった)
体に残る情事の熱と下腹部の鈍痛が、一連の出来事を美羽に雄弁に知らしめた。美羽を抱くようにして眠る翔は、まだやすらかな寝息を立てている。
昨夜のふたりは、きっとなにかがおかしかった。午前〇時に交わしたキスが、ふたりに魔法をかけてしまったに違いない。
契約的な結婚をして二カ月、美羽たちは一線を越えるのはおろかキスもしたことがなかったのだから。そもそも離婚前提だから、暗黙の了解でそういった関係にはならないはずだった。
国際線と国内線の両方に搭乗する翔は不規則な勤務のため、一緒に暮らしていても生活はすれ違い気味。ルールに則りお互いに干渉せず、独身の頃とほぼ変わらない毎日を過ごしてきた。
結婚前と変わらず会社で接する機会は少なく、マンションで顔を合わせて話すことはあってもルームシェアしているようなもの。夫婦として振舞うのは、お互いの家族に対してだけだった。
ところが新年を迎えた午前〇時、事態が急転。
友人たちにけしかけられて唇を重ね、さらには体まで重ねてしまった。