極上パイロットの赤ちゃんを溺愛初夜で宿しました

主翼がほんのりと白くなっている程度なら大丈夫だろうと安易に片づけるのは、航空業界に身を置く人間としてとても危険なことである。

万全な状態とのわずかな違いがエラーを生み、重大事故へ繋がる可能性を秘めているのだ。

百合香の報告を受け、再度整備室に連絡。すぐに主翼の雪が除去され、完璧な状態で飛び立つことができた。

乗客の命を守るのはパイロットをはじめとしたクルーたちだけではない。地上にいるスタッフたちの細やかな連携が安全に繋がり、快適な空の旅を提供できるのだ。

美羽のそういった真摯な姿勢に触れ、機長として改めて背筋が伸びる想いを何度もした。飛行機を愛する者同士のシンパシーというのか、そういうものを感じていた。

だが、それだけのはずだった。

たった一度、軽く触れただけのキスが、翔の心に火をつけた。まるでスイッチをポンと切り替えたような感覚だった。

彼女を抱きたい。手に入れたい。

そう思う裏側で〝いや、まさか。この俺がなんで〟と激しい葛藤もあった。

そんな激情を抱いたのは生まれて初めてで、未だ戸惑いの中にいる。
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