極上パイロットの赤ちゃんを溺愛初夜で宿しました
「それはお互い様だろ」
兼平も二日からこうして出勤しているのだから。
「そうだな。てか、顔色があんま良くないな。パイロットのくせに体調管理を怠ったか? 新人と一緒にもう一度研修を受けるか?」
「ひと言余計だ。心配のひとつくらいしてくれてもいいだろ」
兼平と並んで歩きながら不服を申し立てる。
同期の仲間として、そのくらいはいいではないか。
「残念ながら、それは奥様の役目じゃないのか?」
声をひそめながら目を細めた。どこか嫌味っぽい口調なのは、ふたりの結婚が契約に基づいた離婚前提のものだと彼も把握しているせいだ。
婚姻の届け出は社内規定で定められているため完全に秘密にはできず、兼平に報告しないわけにはいかなかった。つまり偽りの夫婦だと知っているがゆえの発言である。
そもそも兼平には、この結婚についてもさんざんな言われようだった。いくらお互いが了承のうえとはいえ、結婚に対する冒とくだと。
最後には『後悔しても知らないぞ』と捨て台詞を吐かれた。一児をもうけ、幸せな結婚生活を送っている兼平には理解しがたいものだったのだろう。