極上パイロットの赤ちゃんを溺愛初夜で宿しました
一瞬のうちに結婚できる魔法
およそ四カ月前、九月初旬――。
藤倉美羽は、幼い頃から空を見るのが大好きだった。
いや、空高く飛ぶ飛行機を眺めることと言ったほうが正しいかもしれない。
真っ青な空を独り占めするかのように悠然と飛ぶ姿も雲の合間を縫うように飛ぶ姿も、黄昏時に夕日に向かって飛ぶ哀愁漂う姿も、美羽の心を躍らせた。
幼稚園でも小学校でも描く題材といったら飛行機。女の子の絵でも花の絵でもなく、ひたすらそれ一本だった。
いつだったか〝虫歯をなくそう〟という歯科衛生のポスターを学校で描いたときに、飛行機のコックピットを人の口に見立てて描いたら思いがけず表彰され、両親にとても喜ばれたことがあった。
その絵は立派な額縁に入れられて、今でも自宅のリビングに堂々と飾られている。『将来は画家かもしれないぞ』と、親バカ丸出しでうれしそうに親戚中に触れ回った父が懐かしい。
飛行機をイメージして美羽という名前をつけたのは、その父だった。
飛行機をこよなく愛し、その製造に携わる父が『女の子が生まれたら絶対につける』と心に決めていた名前だという。