極上パイロットの赤ちゃんを溺愛初夜で宿しました
美羽に固執する理由はただひとつ、愛のないセックスで処女を奪ってしまったから。それに尽きる。
(私が処女じゃなければ翔さんをこんなに悩ませることはなかったのに……)
正直に初めてだと打ち明けなければよかったと激しく後悔する。とはいえ経験があるふりをしても、きっとばれたに違いないけれど。
「だから遠慮はしない」
手を掴まれて引き寄せられ、唇が軽く触れ合う。
汗の匂いに交じって、翔の匂いが鼻をかすめた。
「気をつけていっておいで」
翔に肩をトンとされ、その勢いで玄関を出る。
結婚して二カ月、美羽は快適な生活を送ってきた。お互いに干渉せず、単なるルームシェアの感覚といったらいいのか。ただの同居人だった。
それなのに期間満了日の離婚を目前にして大晦日に崩れた関係性が、さらに激変していく。
美羽の頭の中は、なぜ?という疑問符だらけ。
混乱のなかマンションのエントランスを出たら刺すような冷たい風に吹かれ、マフラーを口元まで引き上げた。