極上パイロットの赤ちゃんを溺愛初夜で宿しました
一夜の過ちがもたらせたもの
好きになってはいけない。心を揺らしてはならない。
鏡に映った自分に向かい、心の中で呪文のように唱える。
翔から宣戦布告のような宣言されてから一カ月、美羽はそう自分に言い聞かせるのが癖になっている。予定どおり離婚して、過ちに責任を感じている彼を解放してあげたい一心だった。
この一カ月、フライトの都合で翔が自宅にいたのは三分の一程度。時間が合うときに食事を一緒にしたのは数えるくらいでも、問題は彼の態度にある。
体の関係はあれきりなく寝室も別のままだからよしとして、ふたりきりでいるときの翔は抱きしめてきたりキスをしてきたりと容赦がない。
そこに心はなく、翔はあの夜の責任を取ろうとしているだけだとわかっていても、美羽は翻弄されるばかりなのだ。
マサチューセッツに住む母・芳江から電話が入ったのは、美羽が仕事へ行く支度をちょうど終えたときだった。
グレーのリブニットにアシンメトリーなブルーのプリーツスカートを合わせ、クローゼットの姿見の前で確認しながら応答をタップする。
《元気にやってる?》
「うん、元気だよ。お母さんたちはどう?」