極上パイロットの赤ちゃんを溺愛初夜で宿しました
大スキャンダルだ。きっとあっという間に空港中に知れ渡ってしまう。
ところが翔は全然意に介さない様子で、微笑みながら歩きはじめた。
隣を歩くわけにはいかず、彼の数メートル後ろをついていく。後ろ姿でさえ華麗な彼を見ながらオフィスフロアを目指していたら、背後から声を掛けられた。
「藤倉さーん、おはようございまーす」
桐谷だ。美羽を見つけて小走りにやって来た。
その様子が人懐こい犬のようで、つい顔が綻ぶ。
「なんで笑ってるんですか? あ、俺に会えてそんなにうれしいですかー。いやぁ、参ったな」
「違います。おはよう」
頭を掻く桐谷にやんわり否定する。
なかなかめげない楽観的なところは、ある意味羨ましい。
「おはようございます。ところで、藤倉さんって電車通勤してませんでしたっけ?」
「えっ、そうだけど……どうして?」
隣に並んで歩きはじめた桐谷に聞かれてギクッとする。
「今、駐車場のほうから来ませんでした?」
「う、ううん、気のせいじゃないかな。今日も電車だよ」