光と闇の歌姫
「あれ……光の歌姫と闇の歌姫じゃね?」
シャインとノワールが外で歌っていると、町を歩いていた人が次々に足を止める。
町の人々からは、シャインは「光の歌姫」、ノワールは「闇の歌姫」と呼ばれているのだ。シャインとノワールは1曲歌い切ると、同時に頭を下げた。
そして、ノワールはシャインの腕を引いて町を歩き出す。
「……光の歌姫と闇の歌姫なら、あの王様を鎮められるんじゃない?」
たまたま聞こえた言葉に、シャインは立ち止まった。
この世界は一度、この国の王様のせいで滅びそうになったことがあるそうだ。それは、ただの噂でしかないのだが。
しかし、そう噂されるほど恐ろしい人物であることは事実であり、周りからは、短気な王様を怒らせたら何が起こるか分からない、と恐れられている。
「……シャイン?」
「……何でもない!」
シャインは、首を傾げるノワールににこりと笑った。
「……シャイン……」
あれから1週間後の朝。ノワールはなかなか起きてこないシャインを起こそうと、部屋に向かう。
「……シャイン、朝……早く、起きて……」
シャインの部屋をノックしながら、ノワールは言った。しかし、シャインは返事をしない。