棗ちゃんはステキな恋がしたい
「お前ああいうのがタイプなのか」
「へ」
「見る目ねーな」
「ちがっ……」
「だいたいチェスってなんだよ。あの空気で危機感なさすぎか」
「初めてで……つい、楽しんじゃっただけで」
「楽しかったんかい」
「でもわたし、ずーっと一斗のことが気になってたよ?」
「はあ?」
「はやく会いたかったから」
「……お前またそういうこと平気で言いやがる」
「ウソじゃないもん。一斗と前までみたいに過ごせなくなるかもって思うと泣きそうだった」
「大袈裟なヤツ」
「ほんとだよ? はやく一斗の疑い晴らしたかったし、たくさん、おしゃべりしたかった――」
「黙んねーと。くちふさぐぞ」