棗ちゃんはステキな恋がしたい



一斗と河川敷で別れ、近くに停められていた黒塗りの車へと乗り込む。



「お嬢」



何を言われるかわからない。逃げたい。


「1つだけ」

「……なに?」

「けっして恋仲には、ならないでください」


――――?



「洲崎一斗とは」



えーっと。つまり。

わたしに一斗と付き合うなって釘をさしてるんだよね。


「一斗はトモダチだよ」

「それにしては随分と距離が近いようで」

「あれは、からかわれてただけ」

「遊びでお嬢に手を出した日には東京湾に沈みますね」



縁起でもないこと言わないで。



「彼とは一定の距離を保ってください」

「一斗は、悪い人じゃないよ」


それは坂田もよくわかってるでしょ。


なのに、どうしてそんなこと言うの?

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