棗ちゃんはステキな恋がしたい
部活の先輩は相変わらず優しくしてくれるし、体育の授業ではとなりのクラスの女子がフレンドリーに接してくれる。
「聞いてよー、仮屋さん。この子、彼氏できたんだよ」
「え!」
「同じ塾なんだって」
「お、おめでとう!」
いいな。
「終わったあと、家まで送ってくれるらしいよ」
好きな人がいる毎日は
ときめきでいっぱいのはず。
会えない時間だって相手のこと考えて
ドキドキ……したり?
うらやましい!
「ナツメ」
「わっ!!」
いきなり顔を覗きこんでこられ、思わず椅子から立ち上がる。
ゴン、とうしろの席に椅子がぶつかった。
幸いそこには誰もいなかったから、迷惑かけずに済んだ。
大きな音はたてちゃったけど。
「ビビりすぎ」
一斗が、うしろの席に座った。
なぜ。
そこ、
真面目な男の子の席だよ。