棗ちゃんはステキな恋がしたい



「今きたの?」


相変わらず重役出勤だね。


「あれから変わったことねーか」

「……かわったこと?」

「あれば俺に言えよ」

「あっ。自分で髪を結べるようになった!」


低い位置で、ひとつにまとめるやつ。

まだ綺麗にはできないけど。

ささっと、適当な感じに。



「これで一斗にイジワルされても大丈夫」

「ちげーよ」

「へ?」

「だから――あの銀髪に付きまとわれたりしてねえか?」

「なんにもないよ!……送り迎えは車だし。一人で外出もしないから」

「ならいい」



もしかして、心配してくれてるの?



「なあ。お前って」

「ん?」

「住む世界ちがったりすんの」

「……え」

「執事の送り迎えにバイオリンの稽古なんて漫画の世界でしか知らねーわ」



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