棗ちゃんはステキな恋がしたい
一粒口の中に入れてみる。
ん~!!! さいこうっ!!!
「けっこういけるな」
そう言って数粒一気に食べてしまう。
一斗のひとくち、おおきい。
坂田が止めに来なくてよかった。
「一斗って甘いもの好きだよね」
塩よりキャラメル派なんだね。
クッキーはハチミツ入りが好きだし。
「ガキの頃。甘い菓子、一切食わせてもらえなかった」
「え!?」
「別に今も許可おりたわけじゃねーけど。我慢するのもバカバカしくなってよ」
「虫歯になるから禁止されたの?」
「ああ」
一斗の家、厳しいのかな。
……女の人の家にお泊まりしに行きたくなっちゃうのも、そのせい?
「ちょっとわかるかも」
「お前も似たような経験あんの?」
「禁止までいかないけど、だらだら食べてたら虫歯になるって注意されるよ」
「じゃあこのポップコーンは禁忌だな。残りは俺が食うか」
「今日は特別だもん!……あ、お金」
「いらねーよ」
「ええっ。そういうわけには……」
「誘ったのは俺だ」
「でも一斗、自転車の修理するお金必要でしょ?」