棗ちゃんはステキな恋がしたい
言ったあとに気づく。
本人から聞いていない情報をわたしが知っているとバレてしまった、と。
「……えっと。風のウワサで、壊れちゃったって聞いて」
「まーな」
「自転車ないと困らない?」
「壊したヤツらに弁償させる」
アキさんが怪しいって伝えるべきかな。
迷う。
教えたら、きっと、またケンカしちゃうもん。
シアターの中に入ると
となり同士の座席に並んで座る。
真ん中だからスクリーンがよく見えそうだ。
「……あっちの席なんだろう」
ソファみたいな。なんだか長い。
「カップルシートだな」