棗ちゃんはステキな恋がしたい


それからわたしは

着物に着替え、料亭へとやってきた。


いくらなんでも急すぎる。


さっきまで一斗と一緒にいたのに。


余韻にくらいひたらせてよ!



【本気って言ったろ。お前のこと】



(あの言葉を素直に受け入れられたら、どれだけ幸せだろう……)



窓から見えるのは――日本庭園。



竹に水が注がれ、カコンと石を叩いている。


特別珍しい光景でもない。

うちにも同じようなものがあるから。



「……あれの名前なんだっけ」

鹿威(ししおどし)



――背後に人の気配なんて、なかったのに。



「そんなことも知らないのか」



突然現れたのは、丸い眼鏡をかけた、黒髪の男の子。

わたしと同じく和装。


と、いうことは

この男の子が――……



「本当に君が僕の許嫁? 思ってた以上に頭悪そうだね」

< 228 / 350 >

この作品をシェア

pagetop