棗ちゃんはステキな恋がしたい
それからわたしは
着物に着替え、料亭へとやってきた。
いくらなんでも急すぎる。
さっきまで一斗と一緒にいたのに。
余韻にくらいひたらせてよ!
【本気って言ったろ。お前のこと】
(あの言葉を素直に受け入れられたら、どれだけ幸せだろう……)
窓から見えるのは――日本庭園。
竹に水が注がれ、カコンと石を叩いている。
特別珍しい光景でもない。
うちにも同じようなものがあるから。
「……あれの名前なんだっけ」
「鹿威」
――背後に人の気配なんて、なかったのに。
「そんなことも知らないのか」
突然現れたのは、丸い眼鏡をかけた、黒髪の男の子。
わたしと同じく和装。
と、いうことは
この男の子が――……
「本当に君が僕の許嫁? 思ってた以上に頭悪そうだね」