棗ちゃんはステキな恋がしたい
「お嬢。一つだけお伝えしておきたいことが」
「なに?」
「なにか異変を感じたら――些細なことでもかまいませんので、報告してください」
「異変? たとえば?」
「なんでもかまいませんよ」
えらく抽象的だな。
「よくわかんない」
「いつ、なにが起こるかなんて。誰にもわかりませんからね」
心配してくれてるの?
「大丈夫。もしものときは、相手を油断させて逃げるし!」
「逃げる?」
「護身術習ってるもん」
「――ほう」
突如、坂田に押し倒される。
けっして腕を捕まれたわけでもなければ
どこかに触れられているわけでもない。
それでも――――近い。
「逃げられますか」
「坂田が相手じゃ勝てないよ」
「この坂田から逃げられるようになるまでは安心できませんねえ」
坂田から逃げられる女の子なんていないと思う。