棗ちゃんはステキな恋がしたい
身を起こすと――そこに
「なん……で」
ミツルさんが倒れていた。
「ミツル……さ……」
ミツルさんの足が、
ポールの下敷きになっている。
駆けつけた先生が、急いでポールを動かす。
歪んだ顔で自分の右足首を抑えている、ミツルさん。
「ミツルさん……!」
「棗、すまない」
「え?」
「いきなり押して、驚いたろ。痛かったか」
そうわたしに問いかけるミツルさんの声は、とても優しい。
「わたしは、大丈夫です。……でも。ミツルさんが」
「そんなに棗から名前を呼んでもらえるなら。このくらいの痛み、いくらでも与えられたいね」
「きもちわるいこと言ってる場合じゃないです」
「泣きそうな顔も。可愛い」
「病院に……」
「心配するな。たいしたことない」