棗ちゃんはステキな恋がしたい


「ダメだよ、ミツルさん。無理したら悪化しちゃう」



それに、痛いの我慢して走るところは、見ていられないよ。



「棗がケガしなくてよかった」

「……ミツルさん」

「いっそ僕が車椅子生活になったら――棗は責任を感じて僕の面倒を一生みてくれるのかな」

「ば……バカなこと言ってないで今すぐちゃんと診察と治療受けてください。キライになりますよ!」

「き、嫌いになられるのは……死ぬよりつらいな」

「それじゃあリレーは諦めてくれますね」

「……戦わずして負けるのか、僕は」

「それは違うだろーが」



カーテンの向こう側から、声が聞こえる。



「お前はナツメを救った」

「……一斗!」

「自分がどうなるかよりナツメのことを考えた。咄嗟にそんな判断できるヤツ、そういないだろ」

「よせ。同情するな。僕の敗退は決定的だ。敗けは敗けだからな」

「ふーん。案外オトコだな、お前」



一斗が自分のハチマキを外す。



「もっとズルいヤツだと思ったわ」

「なんのつもりだ」

「勝負は保留。それで文句ねえだろ」

< 296 / 350 >

この作品をシェア

pagetop