棗ちゃんはステキな恋がしたい
Ep.19 ピンチ
天気は、なんとか持ちこたえてくれた。
グレーの雨雲が空一面に広がっていて、いつ雨が降ってもおかしくない。
「お疲れ様です。お嬢」
「あれからミツルさんどうなったの?」
「おや。クラスの優勝を喜ぶより先に許婚の心配ですか」
「茶化さないでよ坂田」
「病院で処置を受け、今は眠っているようですね」
……眠っている?
「彼はここ数日トレーニングに打ち込んでいましたから」
「そうなの?」
「体育大会での活躍。お嬢に少しでも見てもらいたかったのでしょうね」
なのにわたし、自分のことで精一杯になっちゃっていたね。
「ただのストーカーではないのかもしれませんね。彼」
「……うん」
「病院までお送りしましょうか」
「でも、寝てるんでしょ」
「彼のことです。お嬢が見舞いに来るなら死ぬまで入院したい、と言い出しかねませんね」
「それだけヘンなこと言う元気があるならいいんだけど」