棗ちゃんはステキな恋がしたい
「手遅れだ。お嬢」
ハルおじさんは命乞いせず、運転席で穏やかにタバコに火をつける。
「俺が組に与えた損害はデカすぎる」
だからって、命をもって償うなんて……。
「お嬢の誘拐までして。生きて帰れるわけがねえ」
わかんないよ。
ハルおじさんは、こうなること、わかってたんじゃないの。
なのにどうして逃げずにうちに寄ったの?
「最後に言い残したことがあるなら聞いてやる」
「坂田!」
「できるものなら一発で頼むわ。拷問だけは勘弁」
「銃をおろしなさい。わたしは誘拐なんてされてない。ちょっと山道をドライブしてみたくなって寄り道してもらったの……!」