棗ちゃんはステキな恋がしたい
「クッキーはどうでしたか」
「あ、あれね。うん。評判良かったよ!」
「そうですか」
「……ただ。あまりよく思ってもらえなかった子も。いたみたい」
思い出したら、泣きそう。
ここで涙を流すわけにはいかないけれど。
「ああ。なるほど。味覚音痴なんでしょうね」
「そういう言い方よくないよ坂田」
ほんとのところ、みんなの本音は、よくわかんない。
だけど少なくとも一斗は
一斗だけは、また食べたいって思ってくれた。
それがすごく嬉しいし救われる。
「一度あれを口にしたならば、そこらのスーパーやコンビニで買うものでは、もう満足できないんじゃないですかね」
坂田が言うと不気味。
「中毒性のある味に仕立てておきましたから」
ヘンなもの混ぜてないだろうな?
「それでも。いいものがわからない人間も、いれば。あえて質の低いものを好む変わり者もいますから。万人受けなんて狙わなくていいんですよ」