棗ちゃんはステキな恋がしたい


……万人受けを、狙わなくていい?


「どれほどの有名店の料理でも。口に合わない人は出てきますよね」

「うん。いると……思う」

「なにも独裁者を目指しているわけでもないんですから。全員の心をつかもうなんて考えなくていい。誰からも好かれる人間なんて。いませんよ」


それでもわたしは、みんなの笑顔がみられるクッキーを焼きたかった。


「もうお菓子配るの……やめようかな」


喜んでくれた子の中に、無理に食べてくれた子がいたとしたら。

迷惑だったなら。


……自己満足、だし。


あんな風に怒られるなんて思わなかった。


「お嬢に文句をつけるような人間。金輪際相手にしないことです」


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