棗ちゃんはステキな恋がしたい
「坂田って……薄情だよね」
ずっとうちで尽くしてきてくれたから、ときどき忘れそうになるけど。
坂田ほど他人に対して関心の薄い人間、見たことがない。
「親父さんに。どう報告しましょうかねえ」
「なにを?」
クラスの女の子とケンカみたいになったこと?
「逢い引きのことですよ」
「い、言わなくていいよ」
そんなんじゃないし。
「しかし。ありのままを伝えろとの命令で」
「偶然あそこで会っただけだもん。一斗とは」
「ならば。接吻しそうな雰囲気になっていたことについては」
「セップン?」
「口づけされかけていましたね」
「……っ、なってないよ! そんなムード!」