棗ちゃんはステキな恋がしたい


 ◇


制服が完全に夏服に移行した頃。


「お待ちかねの席替えだ」

「やったー!」


リクエスト多数により実施された席替えで、わたしは一斗と離れてしまった。


新しい友達を作るチャンス!


……と思う気持ちが半分。


もう半分は、一斗が隣にいなくて、ちょっと心細い。


あんまり学校に来ないけど来たら声かけてくれるもん。

お菓子も一斗なら嫌がらずに食べてくれる。


「よ、よろしくね」


隣の席になった女の子に声をかける。


すると、鞄の中から取り出した本に目をふせてしまった。


聞こえなかったの……かな。


ならば。


うしろの席を振り返った途端、女の子が立ち上がり、どこかへ行ってしまう。


あれれ。

また、タイミング合わなかった。


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