棗ちゃんはステキな恋がしたい
「坂田は恋をしたことがある?」
「ないですねぇ」
「だよね」
坂田くらいの年なら、きっと、もう結婚している人もいるだろう。
坂田が誰かを好きになるところは、ましてや家庭を持つなんて、ちっとも想像できない。
「それじゃあ。坂田はキスしたことないんだ」
「……ハイ?」
「大人なのに。わたしと一緒だね」
「…………」
「坂田、女の子と手を繋いでデートしたこともないでしょ」
わたしが小さいときは、よく繋いで歩いてくれていたっけ。
「ふふ。仲間だね」
「お嬢」
「んー?」
坂田が無言で数秒わたしを見つめてくる。
なに?
「……いえ。そうですね。坂田は、お嬢に先を越されてしまうかもしれません」