棗ちゃんはステキな恋がしたい
「買い物の仕方とか。電車やバスの乗り方とか」
「それはお嬢が特段知っておく必要のない知識では」
わたしが不器用なのって、もしかしなくても、パパと坂田のせい。
そして2人に甘える自分のせい。
「わたしが今より自分のことできるようになれば、坂田も余裕できて、たくさん好きなこと――」
「私のことはいいのです」
「どうして?」
いくらパパとの約束だからって……。
「坂田の愉しみを。奪わないでいただきたい」
「……たのしみ?」
「他人のことまで考えるようになるなんて。大きくなりましたね、お嬢」
やっぱり坂田はなにを考えているか、わからない。