棗ちゃんはステキな恋がしたい
制服に着替えて教室に戻ると、一斗が一人で扇風機にあたっていた。
USBで充電するタイプの手に持つやつ。
「この学校暑くね」
「たしかに……エアコンのききが、悪いよね」
「クソだな」
席が離れてからは、話せるチャンスが減っていた。
もう少しここに立っていてもいいかな。
「かわいいね。それ」
でも、デザインが、なんていうか……
女の子が好きそうなミントブルーとピンクの水玉模様。
可愛いものを男子が持っちゃいけないルールはないし、一斗が可愛いものを選ぶのは自由。
それでも
「奪った」
わたしの知らない女の子の私物を一斗が使っているのは、なんか、
……モヤモヤする。