棗ちゃんはステキな恋がしたい


一斗がヘアゴムを握ったまま席をたち、どこかへ行ってしまう。


……持っていかないで!


どうしよう追いかけるべき?

いやでも返してもらったところで結えない。


ひとまず席にもどってタオルで髪をふいていると、女の子たちが教室に戻ってくる。


先生に注意されないかな。


少しして、ななめ前の席の女の子が

慌てた様子で鞄の中に手を突っ込んでいることに気づく。


「……ない。どうしよ」


なにかをなくしたみたい。


「ちゃんと探した?」

「忘れたんじゃないの」

「探したし、忘れてない! たしかに鞄に入れてたの!」


興奮気味に話すのは、橋本さん。


「なんで預けておかないのよ」



探すの手伝った方がいいかな。



「まさか、財布盗られるなんて思わないし」


――……え?

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