棗ちゃんはステキな恋がしたい


「さ、触るな」

「なんも持ってねーぞコイツ」


佐野くんが橋本さんに告げると


「だから言っただろ!」


谷口くんが、散らばった荷物を片付け始める。


「それじゃあ。最初に教室に戻ってきたのは?」


橋本さんが谷口くんに問いかける。


「それもあんた?」

「いや。……僕が戻ってきた頃には。教室は、すでに人がいて」

「は? あんたが鍵管理してたんでしょ」

「でも。開いていたんだ」


たしかに、わたしが教室に戻ってきたときには、教室の鍵は開いていた。


中には、先に、一斗がいた。


「誰がいたのよ」


どうやって一斗は中に入ったんだろう。


今はそんなこと考えるよりも。

このままじゃ、一斗が疑われるかもしれない。


どうしよう。


「俺だ」

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