棗ちゃんはステキな恋がしたい
一斗が、教室に戻ってきた。
「鍵開けて入ったのは。俺だ」
「……洲崎くん、が?」
橋本さんが目を見開く。
佐野くんは、さっきまでの勢いをなくし、一斗から目をそらす。
「で。俺にも鞄ひっくり返させんの?」
みんな、気まずそうにしている。
一斗が相手だと、誰も意見することができないんだ。
「一斗のこと疑ってんのかよ!」
一斗の前の席の女の子が橋本さんを睨みつける。
ギャルの、一斗とよく話をしてる子だ。
「……いや。疑ってるって……いうか」
「お前の財布なんか誰も欲しくねーから!」
「っ」
「いくらなくなったかしらないけど。いちいち騒ぎすぎなんだよ!」
教室が険悪なムードに包まれる。