販売員だって恋します
「お付き合いされているのかしら?」
「まさか。今日は無理を言って、ご一緒して頂いたんです。そう出来ればいい、とは思っていますけどね。」
そう言って神崎はにっこり笑う。

奥様方は噂好きだ。

これだけの話でも、神崎の三男坊にいい人がいるらしい、とは噂にはなるはずだ。
今は、それでも構わない。

そつなく、声をかけられた人と話している由佳を少し離れたところから見て、神崎は嬉しい気持ちになる。

愛おしい。
出来たら、抱きたい。
自分の腕の中に閉じ込めてしまいたい。

そのふわりとしたスカートの中を、品のあるワンピースの中身を、全て自分のものにしてしまいたい。

あの華奢な身体を抱き締めて、感じるところに口付けたら、どんな反応をするのか。

綺麗な由佳のこと、見知らぬ男性が熱心に話しかけているのを見つけた。
神崎はそこに歩み寄る。

「ゆーちゃん、大丈夫?」
神崎が声を掛けると由佳の傍にいた男性が、少し身を引いた。
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