販売員だって恋します
「いえ。デパートの方です。」
つまり、デパートの関係者ということなのだろう。

由佳は、ひどくその男性が気になるようで、神崎もつい目をやってしまう。
男性は側にいる年の若い男性の連れであったようだ。

その若い男性も目立つ人物だった。一見俳優かと思うほどの恐ろしく整った顔立ちに、スーツ姿がこれほど綺麗なのは、おそらくオーダーだからだ。

この場でも物怖じしない、と言うことは、場に慣れていると考えられた。

ティーパーティに慣れている、若い男。
立ち居振る舞いからしても、それなりの家に育ったのだろう、と想像させる。

そして、由佳が気にしていた男性の方は、連れだからと敢えて、地味目のものをチョイスしている。
とてもバランスが良くて、目立つコンビだった。

年はだいぶ上のようだが、整った顔立ちは一見優男風にも見えなくはない。
けれど、妙に隙のない男性だ。

神崎は近くにいた顧客の1人に声をかけた。
「あの方、ご存知ですか？」

顧客はふと顔を上げ、笑顔を見せる。
「ああ、成田翔馬さん。お珍しいわね。」
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