販売員だって恋します
そこで出てきたのが、由佳の勤務先のデパートの名前で、そこの御曹司というのが答えだった。

「ご子息がこういう場に出られるのは、珍しいんじゃないかしら。」
「お連れの方はどなたなんだろう?」
「大藤さん?確か、秘書の方だったと思いますよ。」

秘書……なぜ、御曹司の秘書と接点があるのか?
由佳は、敢えて目に入れないようにしているようにも見えた。

「ゆーちゃん?」
「はい?」
「あの人知り合いなの?」
「同じ会社ですから。」

素っ気ない言い方は、由佳にしては珍しい。

確かに同じ会社ではあるだろうけれども、それだけではない、何かがあるのではないのか?

秘書の男性が、ちらりとこちらを見たような気がした。
ふっと口元に笑みを浮かべて、先方が頭を下げるので、つられて神崎も頭を下げる。

その男性は神崎が、何者なのか分かっている様子だった。
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