販売員だって恋します
そして別人と話をしていた翔馬は、その大藤の声に、ひょいっと顔を出した。
「ご紹介したいのですが。」
大藤がそう言うと、素直に頷く。

「ああ。」
翔馬と呼ばれた彼は、失礼とその場にいた男性に断って、由佳達の方にやってきた。

近くで見ると、翔馬はクールビューティとも言うような美形だ。

「神崎様です。神崎ホテルグループの……」
神崎が何者か大藤は把握していて、スムーズに翔馬に紹介した。

「ああ、うちのデパートにも地下食に入って頂いていますよね。お世話になっています。デリはたまにお世話になりますよ。」
「デパ地下用に開発しているんです。好評そうで良かった。」

経営者同士の会話。
なんとなく、いたたまれなくて、由佳は目を逃すと大藤と目が合った。

大藤は他人のように、にこりと笑う。
由佳もかろうじて、笑顔を返した。

「奇遇ですね。」
柔らかく、大藤が繰り返した。
「ええ。」

綺麗な庭に立っている2人の間を、柔らかい風がふわりと通る。
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