販売員だって恋します
青い空と整えられた綺麗な緑。
天気は良くて、絵画のように心が洗われるような風景なのに、由佳の胸は痛むばかりだ。

「彼氏ですか?」
「……っ、違います。」

そんな人がいたら、大藤とあんな関係にはなっていない。
そう思って、身体をどれだけ繋げても、気持ちは伝わっていない、その切なさを由佳は噛み締める。

「幼馴染みなんです。」
かろうじて、由佳の口から出た言葉だ。
「そう……?」
ゆるくにこり、と笑って大藤は首を傾げる。

泣きそう。
分かっている。
神崎は良い人だし、由佳のことも、由佳の環境もよく理解している。

由佳も神崎のことはよく分かる。
けれど、違うのだ。

大藤に感じるものは、もっと止めようもないものなのだ。
自分では止めようとしているのに、溢れ出てしまうもの。

恋だ……。恋している。

恋してはいけない人なのに……。

「靖幸さん、ごめんなさい。少し、外しますね。」
由佳は神崎にそっと声をかけて、笑顔を向ける。
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