販売員だって恋します
「はいはい。詳細は聞かない約束ね。他にもあって……この辺はちょっと、不確定要素が多くて、流して聞いてほしいんだが、あくまで噂レベルというか。」

結構そういう情報が、バカにできないことを、大藤は知っている。
殴り飛ばしてでも、急かせたいところだが、うなずく程度で話の先を促した。

「神崎の経営している旅館の一つで、今、改装の話が持ち上がっていて、そこに『くすだ』が絡むんじゃないかと言うのが、業界でも噂になっているらしい。」

「絡む…?」
「具体的なことは本当に不明らしいんだ。さすがに箝口令が敷かれているのか、まだ具体的な話になっていないのか、全く分からない。その絡みも、一部では、一時的なイベントで料理を提供するんだという話から、別邸としてホテルに『くすだ』が入るらしいという話まで、噂は飛び交っているけど、どれも具体性には欠けている。」

「なるほど……。」
おそらく神崎はその件で、飛び回っている最中に、由佳との付き合いが出てきたのだろう。

なるほど、強気な訳だ……と思う。

経営の先が見えない老舗の料理店のお嬢様と、大きなホテルグループの御曹司ともなれば。
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