販売員だって恋します
「気付いてないのか?ムキになっているのは、お前だぞ。」
流してやろうと思った大藤は、水谷に真っ直ぐ返された。

そんな表情《こと》を気取られたことに、腹が立つ。

「坊っちゃんは関係ないな?その調査はこの前済んだよな。お前、個人のことか?」
はあ、とため息が出る。

実際、由佳のこととなると、大藤は多少冷静さを欠くのは否めないからだ。
「そうだ。」
やむなく、返事をする。

「楠田由佳は何者なんだ?」
大藤は、髪をかきあげた。

「彼女だ。」
「はあ?」

「俺の、彼女なんだよ。」
「彼女って何だよ。」

そんな説明が必要なんだろうか。
「お前、彼女って知らないか?お付き合いしている人だろう。交際相手とも言うな。」

「誰の?大藤の?」
「それ以外、今、話す必要が?」
しつこいな。

水谷は大きく息を吐いて、椅子の背もたれにもたれかかる。
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